黒豹プリンスと傷だらけのプリンセス
しかし……


「本当に何? ここ……」


私の目に映ったのは、シャンデリアに高そうな絵画、果てしなく広い建物の内装……今まで見たこともないような、煌びやかな城内とその装飾だったのだ。


「少しは……お分りいただけたでしょうか?」


振り返ると、レオパードが真剣な眼差しで私を見ていた。


「ここは黒豹の国、パンターの城でパルト城。あなたは白豹の国、アルビンからこちらに嫁いで来られたプリンセス……私の婚約者なのです。しかし、大層お転婆だったあなたは、この城を抜け出して異世界で転生してしまわれたのです」


信じられない……だけれども。

今、この私のいる場所……置かれている状況。

それらを鑑みるにつけて、ここは日本ではない……いや、異世界だということに納得せざるを得なかった。


だけれども……

私はキッとレオパードを睨みつけた。


「どうして……こんな所に連れて来たのよぉ!」


私の目からは涙が溢れ……レオパードに詰め寄った。


「私……まだ、元の世界でやらなきゃならないことがあった! 私がいなかったら、健は……健の手術は……」


私は涙を流しながら、レオパードの……スリムな割に厚くて逞しい胸板を、ギュッと握った手でドンドン叩いた。
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