黒豹プリンスと傷だらけのプリンセス
*
高校三年生の夏……
周囲はルンルンと夏休みの予定を立てて、恋だの、彼氏と海へデートだのと色めき立っている中。
私はすっかり冷めた目をして家への帰路についていた。
すると背後から、聞き慣れた声が掛けられた。
「うらら〜。ちょっと、待ちなよ。うらら〜」
クラスの中での唯一の友人、クラスメイトの奈美(なみ)が小走りで私の隣に来たのだ。
「うららは、夏休みは? 何処か、遊びに行くの? みんな、卒業前の思い出作りに旅行行こうって言ってるけど……参加する?」
「いや、参加しないわよ。そんなの」
素っ気なく返すと、奈美は「なぁんだ。うららは行かないのか」って言って、頬を膨らませた。
「みんな、夏休み中に好きな人に告白しようって言ってるのに」
「へぇ、そうなんだ」
興味なく呟くと、彼女は少し首を傾げた。
「ねぇ、うららは彼氏、つくる気ないの」
「ないよ。そんなしょーもないもん」
私はぶっきらぼうに答えた。
「えー。うらら、そんな可愛いくて綺麗なのに。その気になればすぐに、イケメンでお金持ちで素敵な彼氏がつくれるだろうに、勿体ない」
彼女はどこか、不満そうに私を見つめた。
大きなお世話……と言いたいところだったけれど、まるで犬のように無邪気に人なつこくすり寄ってくる彼女のことは、どこか憎めなかった。
「私にはそんなの、つくってる暇なんてないの。あんたも……分かってるでしょう?」
私はすっと目を閉じた。
「えー。でもさ、でもさ。きっと、彼氏をつくったら、サポートしてくれるよ? うららの生活」
彼女は天真爛漫にそんなことを言って……
私も目を開け、そんな彼女を見て苦笑いした。
「それはそうかも知れないけどさ、でも……。やっぱり、私には無理なんだ。人を好きになるってこと」
私がいつも通り、そんなことを話すと……彼女は悲しげに押し黙った。
高校三年生の夏……
周囲はルンルンと夏休みの予定を立てて、恋だの、彼氏と海へデートだのと色めき立っている中。
私はすっかり冷めた目をして家への帰路についていた。
すると背後から、聞き慣れた声が掛けられた。
「うらら〜。ちょっと、待ちなよ。うらら〜」
クラスの中での唯一の友人、クラスメイトの奈美(なみ)が小走りで私の隣に来たのだ。
「うららは、夏休みは? 何処か、遊びに行くの? みんな、卒業前の思い出作りに旅行行こうって言ってるけど……参加する?」
「いや、参加しないわよ。そんなの」
素っ気なく返すと、奈美は「なぁんだ。うららは行かないのか」って言って、頬を膨らませた。
「みんな、夏休み中に好きな人に告白しようって言ってるのに」
「へぇ、そうなんだ」
興味なく呟くと、彼女は少し首を傾げた。
「ねぇ、うららは彼氏、つくる気ないの」
「ないよ。そんなしょーもないもん」
私はぶっきらぼうに答えた。
「えー。うらら、そんな可愛いくて綺麗なのに。その気になればすぐに、イケメンでお金持ちで素敵な彼氏がつくれるだろうに、勿体ない」
彼女はどこか、不満そうに私を見つめた。
大きなお世話……と言いたいところだったけれど、まるで犬のように無邪気に人なつこくすり寄ってくる彼女のことは、どこか憎めなかった。
「私にはそんなの、つくってる暇なんてないの。あんたも……分かってるでしょう?」
私はすっと目を閉じた。
「えー。でもさ、でもさ。きっと、彼氏をつくったら、サポートしてくれるよ? うららの生活」
彼女は天真爛漫にそんなことを言って……
私も目を開け、そんな彼女を見て苦笑いした。
「それはそうかも知れないけどさ、でも……。やっぱり、私には無理なんだ。人を好きになるってこと」
私がいつも通り、そんなことを話すと……彼女は悲しげに押し黙った。