黒豹プリンスと傷だらけのプリンセス
第二章 黒豹の国
*
「麗(うらら)姉ちゃん。お仕事、無理してない?」
殺風景な病室で……その日も弟の健(たける)は、心配そうな目を向けて私を気遣ってくれていた。
「いいえ、私は全然大丈夫だから。健はいい子に……ゆっくり休んどくのよ」
「うん! 僕、絶対に早く良くなる!」
そんな健がいじらしくて、私はにっこりと笑った。
健は七歳で、本当は小学校に行きたい……友達が沢山いる年齢のはずだった。
しかし、彼は三年前、心臓を患っていることが発覚した。
外で友達と遊んで、またあの発作が起こってしまったら……心臓の発作が起こってしまったら、命が危ぶまれる。
本当はすぐにでも手術を受けさせてやらなければいけなかった。
だが、今は……両親も身寄りもない私にはそんなお金はどこにもなかった。
だから、私は風俗の仕事に出る……そんな選択肢を余儀なくされたのだ。
それも毎日、朝から出勤した。
健には自分の姉が、自らのために体を売っているなんてことは悟られたくなかった。
だから、彼には、ちゃんとした会社のOLとして、きちんと朝から働いていると嘘を吐いていたのだ。
健は子供心にも、そんな私を悲しませないために……そのような不幸な状況でも泣き言一つ言わず、健気に病気と闘っていたのだ。
「じゃあね、健。もう少しの辛抱……本当にもう少しで、手術を受けて。みんなと小学校に行けるようになるからね」
私は彼に柔らかく微笑んで病室を出た。
三年間、貯めたお金をかき集めたら、本当にもう少しで手術費用に届くところまできていた。
彼さえ元気になってくれたら……私は風俗からスッパリと足を洗うつもりでいたのだ。
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「麗(うらら)姉ちゃん。お仕事、無理してない?」
殺風景な病室で……その日も弟の健(たける)は、心配そうな目を向けて私を気遣ってくれていた。
「いいえ、私は全然大丈夫だから。健はいい子に……ゆっくり休んどくのよ」
「うん! 僕、絶対に早く良くなる!」
そんな健がいじらしくて、私はにっこりと笑った。
健は七歳で、本当は小学校に行きたい……友達が沢山いる年齢のはずだった。
しかし、彼は三年前、心臓を患っていることが発覚した。
外で友達と遊んで、またあの発作が起こってしまったら……心臓の発作が起こってしまったら、命が危ぶまれる。
本当はすぐにでも手術を受けさせてやらなければいけなかった。
だが、今は……両親も身寄りもない私にはそんなお金はどこにもなかった。
だから、私は風俗の仕事に出る……そんな選択肢を余儀なくされたのだ。
それも毎日、朝から出勤した。
健には自分の姉が、自らのために体を売っているなんてことは悟られたくなかった。
だから、彼には、ちゃんとした会社のOLとして、きちんと朝から働いていると嘘を吐いていたのだ。
健は子供心にも、そんな私を悲しませないために……そのような不幸な状況でも泣き言一つ言わず、健気に病気と闘っていたのだ。
「じゃあね、健。もう少しの辛抱……本当にもう少しで、手術を受けて。みんなと小学校に行けるようになるからね」
私は彼に柔らかく微笑んで病室を出た。
三年間、貯めたお金をかき集めたら、本当にもう少しで手術費用に届くところまできていた。
彼さえ元気になってくれたら……私は風俗からスッパリと足を洗うつもりでいたのだ。
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