黒豹プリンスと傷だらけのプリンセス
「それに、伝令の家臣の話によると、どうやらヴォルブには新たな支配者ができたようなのです」

「新たな支配者?」


レオパードは頷いた。


「ナミという、傲慢で容赦のないプリンセス。由来は不明なのですが……突如現れた彼女がヴォルブを支配するようになってから、ウルフの者達は完全に言いなりで。彼女の言うがままに、小国に攻め入って財宝を略奪……奴らは以前よりも何倍も、攻撃的になったということなのです」

「ナミ……」


それは、聞き覚えのある名前だった。

そう……元の世界で唯一、仲良くしていた親友の名前。

でも、まさか……

私の知っている元の世界の『奈美』には『傲慢で容赦のない』なんて言葉は結びつかない。

彼女は控えめで優しくて、いつもぶっきらぼうな私を気遣ってくれて……

それに、彼女がこんな世界に来ている訳がない。

そうだ。『ナミ』なんて、よくある名前だ。

偶然同じ呼び名のプリンセスで、別人に違いない。



私は真っ先に連想してしまった奈美の顔を即座に打ち消した。


「それで、アルビンには……」

「勿論、そのことを伝えに行くとともに、ヴォルブとの戦争となった時には応援する」

「私は?」

「城の中で待っていなさい……と言っても、うららは聞かないだろうね」


すぐにでも前世での生まれ故郷、アルビンへ行きたいという気持ちで逸っている私を見て、レオパードは苦笑いした。
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