黒豹プリンスと傷だらけのプリンセス
ペガサス車がパンターを出て、アルビンへ向かいひた走る中……


「ねぇ、レオパード」


私はレオパードの真剣な目を見つめ、自分の右手をそっと彼の手に重ねた。


「『私』の生まれた国……アルビン。私も全力で戦うから。絶対に私とあなたで、ウルフの手から守る」


そんな私に、彼も切長の美しい目を細めた。

その表情も……綺麗な瞳も何もかもが、私の意識をすぅっと吸い込む。


(欲しい……レオパードが。ずっと前から……いいえ。これからも、ずっと……)


遥かな空を走るペガサス車の上……

私は、自分の気持ちを抑え切れなくなった。

私の左手はレオパードの頬に触れて……唇は彼のものに重なった。


これまでも幾度となく、彼と交わしたキス。

抑えきれない程の愛しい想いは、自分の前世がプリンセスで彼の妻だから……

それだけではないと思った。

だって、今の私は、自分の本能が訴えかける以上に彼のことを愛している。

彼のことを欲している。

この感情は全く初めて抱くもので……私の中をむず痒くさせて。

これは、まだ幼い頃に自らにつけられた『傷』によって封印されていた気持ち……

きっと、『恋』という感情なんだ。


そのことに気付くと、私の中で心臓がドックン、ドックンと大きく鼓動を響かせ始めて。

彼にそのことが気付かれるのが、何だかとても照れくさくって……

私は思わず息を潜め、途端に無口になった。
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