白に染まる、一滴の青。
「慧くんって、あまり友達いないでしょ?」
「え?」
「その不器用さだと、人付き合いとか苦手そうだなと思って」
悪気が無いのか、笑っている彼女に慧は少しだけ肩を落とした。
さっきまで、褒められたのだと思い胸を弾ませていたというのに、一気に地の底まで落とされた。そんな感覚だった。だけど、彼女に悪意がないことくらいは分かった慧は不思議と嫌な気持ちにはならかった。
「正直、友人だって言える人は数人しかいないです。それに、先輩の言う通り人付き合いも苦手です」
「はは、やっぱり。でも、それって私悪いことだと思ってないよ。不器用だって言ってるのだって、気分を悪くしちゃってたら申し訳ないんだけど、私は良いと思って言ってることだから。そこだけ分かっててほしいな」
バツの悪そうな顔をした後、彼女は複雑に笑った。
「不器用が、良いんですか?」
「だって、さっきも言ったけど分かりやすいんだもん。誰にでも良い顔のできる器用な大人って、何を考えてるか分からないでしょ? 慧くんは、本当に心を開けない人とは分かりやすく距離を置きそうだから」
「まあ、間違ってはないですけど……」
「そして、私は。そんな慧くんの心を開いた唯一の人間だってこと」
へっへん、と両腰に手を置いてどや顔を披露した彼女は、この状況とたった今放った一言に対してか、突然恥ずかしそうに引きつった笑顔へと表情を変えた。
「あはは、ごめん。ちょっと調子に乗っちゃった。でも、少なくとも嫌いではないでしょ?」
滅多に表情を変えない慧のリアクションに温度差を感じてしまったのか、それとも、自分の発言を冷静に思い返して恥ずかしくなってしまったのか。それは分からないけれど、彼女の訂正した一言は、あながち間違いではなかった。