白に染まる、一滴の青。
「何、相手から〝モデルにしてほしい〟とでも頼み込まれた?」
「いや、そうじゃなくて」
「え、まさか岩本から?」
青山はまた目をくるりと丸くして驚いた。今日、青山のこの表情を見るのは既に三度目だった。
「つい、勢いで……」
今、改めて考えたって慧自身も信じられない言動だった。あんな行動をまさか自分がとるなんて。あそこまでして描きたいと思う景色があるなんて。そんなこと、想像もできなかった。
「いや、勢いって……でも、岩本がそんなに衝動的に動くなんて、余程描きたいと思えたんだろうな」
慧は、青山の一言に一度だけ、遠慮がちに頷いた。