白に染まる、一滴の青。
「それって、もちろん全部私ってわけじゃ無いよね? だとしたら、私、そろそろ必要ない感じかな」
「え、あ、いや」
楓の一言に少しだけ慌てた慧の視線が泳ぐ。楓は、そんな慧を見ながら首を傾げていた。
「僕が今一番描きたいのは、先輩……です。なので、できれば協力してもらえると助かります」
小さな声で、言葉を一つずつ選びながら発する。しかし、選んだはずの言葉はどれも小っ恥ずかしい言葉ばかりで、慧は早くも自分の言葉を後悔した。
「えっと……思いもしなかった言葉が慧くんから飛んできたから、ちょっと驚いちゃった」
視線をきょろきょろと動かし、前髪に何度も手櫛を通す。そんな楓の頬は少しだけ赤くなっていた。
「えっと……私で良ければ、是非お願いします。私も慧くんと話してると楽しいし、たくさん愚痴も聞いてもらえるし。なんていうか、ウィンウィンの関係だね」
いつものように笑っている彼女が放った言葉には、きっと深い意味なんてない。だって、その証拠に彼女は少しだけ冗談っぽく、白い歯をにっと見せて笑っている。
だけど、二人の関係を表す〝ウィンウィンの関係〟という言葉が慧にはどうも引っかかってしまった。
彼女の言っていることは間違いない。だけど、名前のつかない二人の関係を需要と供給の一致だと表現するのは、少しだけ悲しい気がした。