白に染まる、一滴の青。
「何の意図があって、そないな質問したかは分からん。けど、まあ、岩本のことやから恋愛について堅く考え過ぎてるんやろ」
今まで、恋愛なんて自分とは縁のないものだと思ってきた。それに、本多とは話はしやすかったけれど、こんなにも踏み込んだ話をしたことはたったの一度もない。
鋭い勘で、慧が恋愛に関する質問を投げかけた理由を当ててくると、本多は再び笑って口を開いた。
「正直、恋愛なんかしたら感情乱されまくりやで。出会わんかったら、こんな思いせんかったやろなって思うことなんか沢山あった。せやけどな、それでも、楽しかった思い出をひとつでも思い出せばそんな考えは一瞬で無くなる。こいつと出会わん人生って、どんだけつまらんねんやろって思う。不思議やけど、恋愛ってそんなもんらしいわ」
語ってしまった自分を恥ずかしく思ったのか、本多は最後に他人事のように〝らしいわ〟と付けて照れ臭そうに笑う。
慧は、本多の熱のこもった言葉に胸を突き動かされたような気がした。
自分も、本多のように。あの頃のクラスメイトのように。恋をして、誰かを大切に思い、思われ。そして、恋をしてよかったと。そう思える日が来るのだろうか。