白に染まる、一滴の青。

「はは、えらい褒めてくれるけどな、俺も元々そんな人と関わることが得意じゃないから。みんなにこんな風に話しかけてるわけちゃうねん。実は」

「え?」

「そりゃあ、みんな可愛い生徒であり後輩やし、何かあれば助けてやろうって思うで。せやけど、初めて会った日から、岩本のことは気になってた。俺と似てたからかな。自分の絵にも自信が無いようにも見えたし、なんか、放っておきたくないなって思った」

本多から、初めて聞いた言葉だった。

確かに、この大学へ入学して間もない一回生の春、本多は慧の絵を見ながらこう言っていた。

〝せっかくええ腕持ってんのに、自信の無さが出てしもうてるわ。これは勿体ないで〟

誰とも話さずに絵を描いていた慧に声をかけてきた彼のことを、慧は始め、嫌なお世辞を言う人だと思っていた。

だけど、彼は人に対して放つ言葉に嘘はない人間だった。何度となく話をしていくにつれ、心地よく慧の懐へ足を踏み込んできた本多。彼に、今では信頼を寄せている。

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