白に染まる、一滴の青。

丸椅子に腰をかけ、彼女がいつもしているように窓の外へと視線を向けた。

確か、彼女はいつも窓の外に向けた視線をもう少し下に向けていたな。そんなことを思いながら視線を下ろすと、そこにあったのは喫煙所で向かい合う本多と楓の姿だった。


────ああ、敵わない。

二人の姿を見て、直感的に、でも、確信的にそう思った。


仕切りがあるわけではない、校舎外に設置されたスタンド灰皿。そこに、煙草を吸うわけではなく、ただ立って話をしている様子の二人。

恐らくは、煙草を吸っていた本多が楓に気を使って煙草を吸うのをやめたに違いない。そのくらいの予測は出来たけれど、慣れ親しんだような、でも、少しだけ不自然なようにも感じる二人の距離感につく名前は予測が出来ない。

校舎の壁に背を預ける本多の表情は、校舎の影に見え隠れしていて見えづらかったけれど、楓のほうは今までに見たことがないような表情をしていた。

いつもより少しだけ遠慮がちに笑っている。だけど、それは作り物には到底見えない。いつもより控えめなのに、いつもよりずっと幸せそうに見えた笑顔。


彼女の視線の先にいつもあった景色。

その中にいたのは、きっと。いや、間違いなく本多であることを慧は知ってしまった────。



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