白に染まる、一滴の青。
「よう、岩本」
最寄駅のホーム。そこで次の電車を待っていると、背後から声がかかった。
「青山か。最近、よく会うよね」
振り返ると視界に現れた青山に、慧は少しだけ口角を上げた。
今日は、少しダメージの入ったデニムのパンツに、流行りに疎い慧でも知っている人気バンドのロゴが入ったTシャツをお洒落に着こなしている彼に、同じ男でもこうも違うのかと慧は溜息が出そうだった。
「〝青山か〟って、冷たいなぁ。それ、もっと喜ぶところでしょ」
そう言って不満そうにしている彼は、怒っているかと思えばけらけらと笑っている。
「この間も会ったし、段々レア感が無くなってるんだよね」
トドメを刺すように、また更に冷たい言葉を投げかけてみる。彼も、こうするとリアクションが面白いのだ。
「いや、友達にレア感求めないでしょ!俺は結構、岩本に会うの楽しみにしてんのに酷いな」
「ごめん、ごめん。冗談だから」
「あはは、分かってるよ」
またけらけらと笑った青山が右のほうを見る。視線を辿るようにして慧もその方角を見ると、二人が待っている電車がやって来るのが見えた。
二人で電車に乗り込み、奥の扉の前に立つ。すると、青山はにやにやとした表情で慧のことを見始めた。