白に染まる、一滴の青。
「もし私が、慧くんの事を好きだって言ったらどう思う? 嬉しい?」
「えっ」
「どう? ねえ、どう思う?」
戸惑う慧に構わず、丸椅子に腰をかけたまま身を乗り出す楓。完全に筆の動きを止めてしまった慧は、視線をきょろきょろと動かしながら彼女の質問について考えた。
「えっと……」
楓が、慧のことを好きだと言ったら。
そんなこと、出会って2日目に考えるはずがない。そんなあり得ない例え話を想像しろという彼女の意図だって、もちろん慧には分からなかった。
「ふうん、そうなんだ。やっぱり、男の人ってスタイル抜群の大人っぽい女子が好きなのね」
慧の返答を待ちきれなかったのか、それとも、慧の表情から勝手に質問の答えを導き出したのか、楓は頬を膨らませてそう言った。慧はまだ、答えを探していたところだった。
「いや、待ってください。まだ僕は何も言ってないんですけど」
「それじゃあ、慧くんはどう答えるつもりだったの?」
「それは……」
慌てて自分の意思を主張しようとした慧に向ける楓の視線は、何かを見透かしているような目だった。今、慧の口から答えを聞いたって、自分の思った通りの返答が返ってくる。そう確信しているような目だ。