白に染まる、一滴の青。
生田の一言に返事はせず、ゆっくり一度だけうなずいた。すると、彼女はくすりと笑ったあと、興味深そうに上半身を前に倒すようにして乗り出した。
「岩本くん、ひょっとして小笠原先輩のこと好き?」
「なっ!」
つい、目を見開いて間抜けな声を漏らしてしまった。
誰から見ても図星だと分かってしまうようなリアクションに、生田はまたくすくすと笑い出す。大きく口を開けて笑う楓とは違う、静かな笑みのせいか生田は少しだけ楓より大人びて見えた。
「分かりやすすぎるよ、岩本くん」
「生田さんはそういうの抜きにしても勘が鋭そうだけど……流石に今のは、自分でも分かりやすすぎると思ったよ」
「それじゃあ、認めるのね」
「認めざるを得ないから」
自分の失態に、眉尻を下げた。あからさまに落ち込む慧の様子を見て、また生田はくすくすと笑い出す。
「それより、岩本くんは一体どこまで知ってるの?」
「え?」
生田の表情が、突然真剣な目付きになった気がした。ただ、ぽかんと口を開いていると、生田は溜め息混じりに再び口を開く。
「その様子じゃあ、小笠原先輩の好きな人すらもまだ知らない可能性あるね」
「え、えっと……本人に直接聞いたわけじゃないけど、一応、予想はついてるよ。まさか、生田さんも知ってるの?」