白に染まる、一滴の青。

「うん。知ってる。あの子も本多先生のこと好きなんだって、見てたらすぐに分かった」

「あの子“も”?」

「私もね、本多先生のこと好きだから」

「えっ!?」

まるで、当然のことかのように本多のことが好きだとカミングアウトをした生田。彼女の言葉に慧は大きく目を見開くと口もポカンと開けた。

「静かに。周りに聞こえちゃう」

「あ、ごめん」

「まぁ、聞こえたらその時はその時か。それに、私の場合はしっかり振られてるし」

生田は少しも悲しそうな顔はせず、ふっきれているかのようなポーカーフェイスでそう言った。

生田は、普段からあまり表情を大きく変えることはない。顔中にしわを作ったり、顔を歪ませる姿を見せない生田は、なんだか楓とは対照的に見えた。

「先生のこと、よく見てた。そうしてると、小笠原先輩がよく先生の隣にいることに気がついたの」

「え」

「あ、あの人も先生のこと好きなんだ。ってすぐに分かった。それに、先生も彼女には少しだけ違う感情をもってる気がする」

「違う感情?」


「そう。小笠原先輩のことを、時々、すごく優しい眼差しで見てことがあるの。愛しそうに、だけど、すごく苦しそうにも見えた」

「それって」

慧は、その先の言葉が声になる前に飲み込んだ。

“ひょっとして、先生は先輩のことが好きなのか”

そんな慧の考えを察したらしい生田は「さあ。どうなんだろうね」なんて他人行儀に返すと、窓の外を見た。




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