白に染まる、一滴の青。
ふと、パレットから楓へと移動させた慧の視界。そこに映り込んだのは、窓の向こう側を見ている楓の横顔だった。
儚げに、哀しそうに。だけど、何かを愛おしく思っているみたいに。さっきまでの笑顔を無くした楓の表情は、昨日、慧が始めて見たときの表情ととても似ていた。
彼女の表情に、描きたいという気持ちをまたもや揺さぶられた慧は、すぐにパレットに筆をのせ、そのまま筆をキャンバスまで運んだ。
ただ、ひたすらに手を動かし、筆を操る。
何か彼女と話をするわけでも何でもなく、ただ、夢中になって描き続けた───。