この言葉の、その先は、
「えーっと…」
まあ、特に考えもなしにやった自分の行為であって、
大きく見開かれた彼女の視線に困り果てても、言い訳の一つも出てこない
「ごめんなさい…」
声にならない、えっ、て言葉が出た
悲しい言葉
文脈のない言葉
拒絶の言葉
右往左往する彼女の瞳と、ギュッと白い手で握ったスカート
戸惑いだとか、弱さだとか、そういうのを一切隠さない、隠せない彼女の姿に、
何故か俺は嬉しくなった
もちろん被虐性とかではなく、なんか、彼女が人間なんだって、
そんな当たり前のこと
「いや、ごめんごめん」
ヘラヘラ笑いながら両掌を合わせる
「何してんのかなーって、興味」
嘘、無意識
「そっちこそ、こんな所で何やってんの?」
彼女に喋らせる暇も与えず、ここまで一気に捲し立てた
よくやく話の矛先が彼女に向いた時、彼女はひどく悲しそうに笑った
「何でも…」
そう言って、窓の向こう、グラウンドの方を見る彼女
夏の夕方の淡い日差しに照らされた彼女の横顔はやっぱり綺麗で
その視線に習う様に俺もグラウンドの方を見る
グラウンドでは野球部、サッカー部、陸上部なんかが熱心に練習していて
彼女が見つめていたその視線の先
夏の日差しを反射して光るグラウンドの砂が、人をあやふやに暈してしまって、
何がそこまで彼女の視線を奪っていたのかは分からなかった