強引な彼の甘い溺愛に囚われて!
教室の扉前に着くと、ピタリと横を歩いていた足音が止まりぐんっと繋いだ手が引っ張られた。
何事かと思って後ろを振り向くとゆきのが俯いたままその場に立ち尽くしているではないか。
「ゆき…?ホントに大丈夫?具合でも悪い?」
「いや…うーん、大丈夫なんだけど…そのー」
口をもごもごさせながら視線を逸らすゆきの。
心なしか頬が少しだけ赤い。
「とりあえず、鞄置こ?それで保健室にいこう」
「え?!ちょっと、マキ待って…!」
ゆきのの制止も聞かずに腕を引いて教室へと足を踏み入れた。
私達が教室に入ると何人かのクラスメートが挨拶をしてくれて、それを返しながら自分の席へと着く。
鞄を置いた私はゆきのの席へと近づいた。
ゆきのはというと、キョロキョロと挙動不審に教室を見回して深くため息を吐いたのだった。
「…ねぇゆき、何があったの?もしかして、西野君じゃ…」
ガッタン!と物が落ちる音がその場に響いた。