強引な彼の甘い溺愛に囚われて!

もっと奥の方見れば………廊下が暗い。

光が差し込んでいない。


暗いところが物凄く苦手な私はだんだんと怖くなってきた。

吸い込まれそうな廊下の奥に体がぶるりと震えた。

と…とにかく早く教室戻らないと!

もと来た道へ戻ろう!



「…………でもどっから来たんだっけ」


極度の方向音痴な私は自分が来た道さえもパニックで分からなくなってしまったようだ。

電話してゆきを呼び出すか。

それでもきっとゆきのにどうここを説明していいのかもわからない。


静かで物音ひとつしない、人影もない。

私は頭を抱えて廊下の真ん中でぺたりと座り込んだ。

ひんやりと冷たい廊下が肌に触れた。




「どうしたの?気分でも悪くなった…?」


後ろからいきなり掛けられた声にビクッと体が大きく揺れた。

ゆ……幽霊?


振り向くことさえ怖くなって両手で耳を塞ぐ。

目さえもぎゅっと瞼を閉じた。



「大丈夫か?本当に危ない…」



男の人らしい低い声にぎゅっと体を強張らせた。

ほ、本当に男の人の幽霊…

ああ…食べられちゃう…っ!


返事も出来ない私は必死で泣きそうな気持ちを抑える。

もう何がどうなってるのか分からなかった。


すると……───

体がふんわりと浮遊感に襲われた。
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