強引な彼の甘い溺愛に囚われて!

慌てて取り出し着信が誰かも確認せずに電話に出てしまった。


「はい、東郷です…」


そう返答すれば、随分と懐かしい…忘れもしない声がする。


「お久しぶりですね…先輩」


高校の時にとても良くしてもらった先輩からの電話。

最後に会ったのは俺が大学を卒業する時だったか。

会議が終わった後少し話さないか、という内容のもので俺はもちろん二つ返事でOKをした。


会議が終わって帰ってもマキはいない。

いつの間にかいるのが当たり前になった存在に自分自身かなり気を許していたようだ。

電話をしているのに、フッと自嘲してしまう。

結局いつだって頭の中はマキのことでいっぱいなのである。

少しだけ明るくなった気持ちで車を発進させたのだった。


***


「准一!」


会議が終わると早速声を掛けられた。

鞄に今日の書類などを詰め、片付けをしている時のことだ。

振り返ると、さきほどまで前の方で会議の中心的な存在であった先輩がニコニコと笑顔で手を上げて見せる。
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