強引な彼の甘い溺愛に囚われて!

…………。

間違いなく語尾に♪がついているのが見えた。

照れたように両頬を押さえながらキャーッと言うゆきのに私は目を見開いたまま固まる。


お、大人の階段?

昔、そんな歌詞のある歌が流行った気がするけど、それなのか?


「そ、それってつまり…」

「うん、康史と……シちゃった」


ぺろり、と悪戯っ子ぽく舌を覗かせて再び照れたような仕草をするもんだから。

私は思わず立ち上がって「ぇえええええー!??」と叫んだ。


嘘、嘘でしょ…!

いや、もう付き合ってからけっこう経つかもしれないけど…

まさか私たちもこんな話をするような年頃になったとは。

おばさん染みた自分がちょっとだけ嫌だったが、口をパクパクさせて言葉が出てこない。


「しーっしーっ!お義兄さんビックリしちゃうでしょ」

「ハッ…むぐっ。……で、大丈夫だったの?」


慌てて口を塞いで座り直すも、もう叫んでしまったのだから意味がないのはわかっている。

だが塞がずには居られなかった。

くぐもった声で聞き返せば、ゆきのはヘラリと笑って見せる。
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