強引な彼の甘い溺愛に囚われて!

客の波に飲まれそうになっていると、遠くで黄色い声が聞こえてくるではないか。

なんだなんだ?と気にはなるが人波で全然前の方が見えない。

すると、ゆきのがぎゅうぎゅうに押しつぶされながら私の方へと駆け寄る。


「マキ、理事長…こっちに向かって歩いて来てるらしいよ?」

「え!?嘘っ!」


内心心が明るくなったが…チラリ、と自分の格好を思い出してその場に居た堪れなくなった。

無理無理、こんなナース服見せられない!

准一さんのことだから家に持って帰ってこいとか言うに決まってる!


「ほら、今あの辺」


ゆきのはキャーという声のする方へと指差す。

近づいてくるたびにドキンドキンと大きく跳ねる心臓をぐっと抑えた。



そして…


「やぁ1-Aの諸君。楽しんでる?」


爽やか笑顔で1-Aの屋台前へと現れたのだった。


「理事長!ぜひこの3種類全部買ってって下さいー」


動けずにいる私の代わりにすかざずゆきのが理事長の元へと寄る。

もちろん私の腕をガッチリと掴んだまま。
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