強引な彼の甘い溺愛に囚われて!
「……キ、マキちゃん!」
「え?…ああああハイ!」
「どうしたの?ボーッとしちゃって。さては准一君に見惚れてた?」
ニヤリと意地悪な笑みを浮かべるママは心底楽しそう。
私はカッと頬を紅く染め、「ち、違うよ!」と反論した。
またやってしまった。一人トリップ。
「さーて……そろそろ修哉さんと私も待ち合わせする時間が迫ってきたから。荷物詰めちゃいましょうか?」
「そうですね。荷物はどちらですか?」
二人が立ち上がったのを見て、私も慌てて立ち上がり部屋へと急いだ。
「じゃあ…マキをよろしくね?准一君」
「いえ、こちらこそあんなダメ親父のこと引き取ってくれてありがとうございました」
「まぁっ…!そんなこと言ったら修哉さんが可哀想よ」
車の助手席に座りながらお母さんと東郷さんの会話を盗み聞きしていた。
やっぱり二人は逢った事あるんだ。
私だけ本当に何も知らない部外者だったのかもしれない。
しゅん…と気持ちが重く目を伏せた。
明日から異国の地へと旅立ってしまう母親と別れを告げ、バックミラーを越しに笑顔で車に手を振り続ける姿を見届けた。
車の中では一言も話さずお互い黙ったまま進んでいく。
雰囲気が異常に重苦しくてどうしていいのやら。