*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
助手席に乗った私がシートベルトを締めるのを確認すると、修平さんは車を発進させた。
二人きりの小さな空間に、沈黙が降りる。
修平さんは黙ったまま前方を向いてハンドルを握っていて、その横顔には少し硬い雰囲気を漂わせている。
私も何となくその空気に黙ったまま口を開けずにいた。
話したいことは沢山あるのに、何から話したら良いのか分からない。
(私が考えたことをちゃんと伝えないと。)
(出張、大変だったのかな……今は疲れてるから話したくないのかも……)
(修平さんが帰ってきたら、すぐに謝ろうって思ってたじゃない。でもなんて言ったら…)
グルグルと回る思考の中、私は必死に最初の一言目を探していた。
横目にチラリと見た彼の硬い横顔に、もしかしたら彼はまだ怒っているのかもしれない、とそんな予感が頭をかすめる。
けれどそれなら余計にちゃんと謝らなければ、と思った。
「あのっ、」
「杏奈は疲れてる?」
二人の言葉が重なり合った。
「えっ?」と呟いた私が目を丸くしていると、運転席からチラリと私の方に視線を投げた修平さんは、少し気まずげに言葉を続けた。
「ちょっと寄りたいところがあるんだ。杏奈が疲れて早く帰りたいなら止めておくけど…」
「私は大丈夫だよ?寄りたいところって?」
「うん…すぐそこだから、少しだけ付き合ってくれるかな。」
「うん……」
頷いた私に、「ありがとう」と返した修平さんは、それからまた黙ってハンドルを握っていた。