*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
「俺に寄ってくる女性達や俺に身内の女性を勧めてくる人達は、いつも『相応しい』とか『相応しくない』とかって口にするけど、それは俺『瀧沢修平』ではなくて『TAKI建設』にとってどうかと思っているだけなんだ。俺個人がどうかなんて、彼らにとってはどうでもいいことなんだよ。」
そう言うと修平さんは懇願するような切なげな瞳で私を見下ろしながら言った。
「杏奈には『相応しい』かどうかなんて必要ないんだ。だって俺は君のことが好きでしょうがないんだから。」
困ったような、それでいて愛おしげな瞳をした彼は、そう口にすると、私の肩に置いていた手をそっと背中に回して、緩く囲うように抱き寄せた。
「そんなわけで毎日仕事ばかりしていたけど、そんな俺を心配したのか祖母は突然仔犬だったアンジュを連れて帰ってきたんだ。犬の世話でもすれば俺のワーカホリックがマシになるんだろうと思ったんだろうな。まぁ、まんまとその作戦に引っ掛かったんだけどね。」
クスクスと楽しそうに修平さんが言う。けれど、その声が途端に寂しげなものに変わった。
「でもそれから一年後に、一緒に暮らしていた祖母は亡くなった。」
修平さんの辛そうな声に、胸の奥がきゅうっと苦しくなる。
お祖母さまの命日は、修平さんの誕生日の翌日だ。
自分の誕生日の夜に消えかけるお祖母さまの命を見守った彼の気持ちを想うと、居ても経ってもいられなくなってしまう。
タイムマシーンがあったらその時の彼のところに行って、彼の背中をギュッと抱きしめたい。
そんなことを考えていたら、突然私の額に温かな物が触れ、ちゅっと音を立てて離れていった。
一瞬のことに何が起きたか瞬時に理解することが出来ずポカンとしていると、今度は唇に温もりが降りてきた。
「んっ、、」
柔らかく重ね合わされた唇がゆっくりと離れていくと、目の前には照れくさそうにはにかむ修平さんの顔があった。
「今は杏奈がいるから大丈夫だよ。だからそんな顔しないで?」
ホッとした私の頬が自然と緩む。すると、なぜか修平さんは軽く目を瞠った。