*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!



 清々しい土曜日の朝。
 外からの陽射しがさんさんとそそぐテーブルには、ご飯とみそ汁、出汁巻玉子、焼き鮭、と言った品々が並べられている。二人で一緒に作った朝食だ。

 毎日とても忙しい修平さんとゆっくりとコミュニケーションを取ることの出来る朝食は、私にとって貴重な時間だ。
 もっとも今日は土曜日で、彼はお休みで私は出勤なのだけれど。

 綺麗な姿勢で食事をしている修平さんは、私の方へ視線を上げると口を開いた。

 「杏奈は休暇中は何か予定あるの?」

 心臓がドキンと跳ねる。
 唐突に問われた中身に一瞬だけ焦った。
 我ながら隠し事は向かない。

 「えっと、予定…蔵書点検があるからあんまり予定は入れてないんだけど、金曜日は約束があるから夕飯はいらないの。あまり遅くならないうちに帰ってくるつもりではいるんだけど……」

 「そうなの?打ち上げか何か?」

 「う…うん」

 修平さんに嘘をつくのは心苦しいけど、遥香さんとの約束を破るわけにもいかず、なんとなく誤魔化すような返事をしてしまう。

 「そっか…杏奈にも杏奈の付き合いがあるだろうし、俺のことは気にしなくていいからゆっくりしておいで。」
 
 「あ、ありがとう。」

 「でも…」

 修平さんは突然眉を寄せて少し硬い顔をすると、思いもよらないことを口にした。

 「よその男の近くにはあまり寄らないように。」

 「えっ!?」

 私は目を丸くして口をぽかんと開けたまま、彼を凝視してしまう。

 「杏奈は可愛いからな…図書館だと雨宮さんもいるし俺のことを知ってる司書さんが多いから大丈夫だけど、よそに行ったらすぐに男が寄ってきそうなんだよな…」

 なにやら私に聞こえるか聞こえないか分からない声でブツブツと呟いた修平さんは、はっと思いついたように顔を上げ、私に向かって口を開いた。

 「杏奈の用事が終わったら俺が迎えに行くよ。」

 「ええっ!」

 私は思わず声を上げた。 

 (だって修平さんはその日はレセプションパーティに出るんじゃないの?)

 彼は私がそのことを知っているとは知らない。
 私はそれとなく伺う。

 「修平さんは仕事で忙しいんじゃないの?」

 「仕事……」

 彼はそう呟くと、黙ってしまった。

 (だよね?だって毎日忙しそうにしてるのも、きっとそのパーティが関係してるんじゃないのかな?)

 「……そうだな、金曜は夜まで抜けられない大事な案件があるんだった。」

 苦いものを噛んだような顔をした彼は、「でも」と言って言葉を続けた。

 「じゃあ帰りはタクシーで帰ること。帰ったら必ず俺にメールして。いい?杏奈?」

 「うん…分かったよ。そうするね。」

 内心では、(ちょっと過保護かも)と思いつつも、それで修平さんが安心するないいや、と了承する。
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