*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!

 朝食の後、ささっと身支度を済ませて出勤する。
 土日は修平さんが図書館まで車で送り迎えをしてくれる。
 
 最初は「自転車で行くから」と断っていたのだけど、断っても結局車に乗せられてしまい、何度目かの時に私は断るのを諦めた。

 毎回毎回私が断るたびに、「俺は少しでも一緒にいたいのに」と寂しげな瞳で訴えられれば、断る私が意地悪をしているみたいな気にさせられ、自分の主張を押し通すことなんて出来ない。



 「ありがとう、修平さん。今日はのんびりしてね。」

 車の中、図書館の向かいまで送って貰ったお礼を言うと、修平さんはシートベルトを外してこちらを向いた。

 「どういたしまして。お仕事頑張って。また迎えに来るから。」

 そう言うと、身を乗り出して助手席にいる私の唇に「ちゅっ」と軽く口づけた。

 「いってらっしゃい、杏奈。」

 「い、いってき、ます……。」

 一瞬で真っ赤に染まった顔を俯かせてそう返事をすると、さらにおでこに柔らかな口づけを落とされる。

 目を瞠って思わず顔を上げた私に、クスリと笑って「杏奈、可愛い」と修平さんが言う。

 頭のてっぺんから湯気が出そうになって、逃げるようにドアを開けて外に出る。
 車の方を振り向くと、ハンドルに置いた手を短く振った修平さんは、車を発進させた。

 手を振り返りながら車を見送る私の、赤くなった頬に、初夏の日差しが容赦なく照りつけていた。


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