*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
ミーティングの後、担当ペア同士でそれぞれの持ち場に入る。
昨日と一昨日の二日間は大きな問題も起きずに順調に点検を進めて来れていた。
「どこから始めてたらいい?」
「こ、こっちです…。」
緊張のあまり上ずる声で雨宮さんを書架へ案内する。
「昨日はここまでで、今日はここから、です。私と千紗子さんの持ち分の残りは、このフロアのあと半分なんです。」
「分かった。ありがとう、宮野さん。」
シルバーフレームの眼鏡の奥の瞳を細め、うっすらと微笑んだ雨宮さんに、私の頬は勝手に赤くなる。
(ど、どうしよう~、今日一日雨宮さんと二人で仕事だなんてっ!!)
心の中ではわたわたと叫んでいる私だけど、表側では口をキュッと引き結んだままだ。
ハンディターミナルを握る手に自然と力がこもって、俯いてしまった。
そんな私の頭上で「くすっ」と小さな笑い声が聞こえた。
「そんなに硬くならないで?取って喰ったりしないから。」
そんな言葉に思わず顔を振り仰ぐ。
「彼と仲直り出来て良かったな。」
目が合った途端そんなことを言われ、思わず瞠目する。
雨宮さんはそんな私を面白げに眺めた後、緩めていた表情を硬く引き締め、「さ、作業にかかるぞ。」と私に背を向け書架に手を伸ばした。