*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
始業ミーティングの時、千紗子さんは体調不良で今日明日は休みだ、という報告が今泉館長からあった。
館長の言葉に私の嫌な予感が当たってしまったことを知る。
千紗子さんのことが心配で、少しでも様子が知りたくて、館長に質問をしようと思ったその矢先。
今泉館長の隣に立っている雨宮さんが、館長の言葉を引き継ぐように話しはじめた。
『妻は昨日の夜に病院に連れて行きました。一応今日は大事を取ってそのまま入院していますが、すぐに退院できると医師には言われています。』
雨宮さんの言葉にホッと肩を撫で下ろす。
『ただ、業務の大変時に休んでしまうことを妻は大変申し訳なく思っています。ですので、今日は私が妻の代行として蔵書点検のお手伝いにお伺いしました。微力ですが皆さんのお手伝いが出来れば、と思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。』
丁寧に腰を折って礼をする雨宮さんに、小さな歓声が起こる。
数年前までここで働いていた雨宮さんにとっては、いわば古巣に帰ってきたようなものだろう。
他館とはいえ、館長と言う役職に就いているほどの人なのに、慣れ親しんだ職場でもこんなふうに礼節をわきまえた振る舞いに、私は関心しきりだった。