*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!


 蔵書点検は、予想していた期間の最短である五日間で終了した。

 そう、 よって残り五日間は私達図書館員にとっての休暇となるのだ。

 年末年始以外にこんなにまとめて休みを取れることはないので、はっきり言って浮かれてしまう。
 蔵書点検が終了した時にはみんなで歓声を上げて喜び合った。

 雨宮さんは土日の二日間、蔵書点検を手伝った後、自分の館に戻って行った。
 蔵書点検は、ここ中央図書館を始めとした数館で、順に時期をずらして行うので、雨宮さんが館長を勤める分館は通常業務中だ。
 自分の方の館は、館員たちに任せてきたから大丈夫だと彼は言っていたけれど、館長を勤めながら他館の蔵書点検の手伝いに入るなんて、本当は大変なことだっただろう。
 私たちは雨宮さんのお陰もあって早く点検を終わらせることができたので、彼には『感謝』の二文字しかない。

 千紗子さんは体調は落ち着いたとのことだけれど、大事を取って休館の間はお休みすることになった。
 
 自宅で安静にしていれば大丈夫だと雨宮さんが言っていたから、私は雨宮さんに千紗子さんへのお見舞いを託けた。

 つわり中に何が欲しいかなんて分からなかった私は、実家の母に電話して聞いて、ゼリーを何種類かと炭酸水をセットにしてお店の人に包んで貰った。

 「これ、千紗子さんに渡してもらえませんか?」

 ちょっと申し訳なさそうに包みを差し出した私に、雨宮さんは一瞬目を見開いた後、その瞳を柔らかく細め「ありがとう、千紗子に渡しておくな」と言って受け取ってくれた。

 業務中には全く見られない雨宮さんの柔らかな微笑みには、千紗子さんへの愛情が滲み出ていた。









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