*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
蔵書点検が終わった翌日、すなわち休暇初日。
私は実家に帰省していた。
実家は私が勤める図書館とは同一県内だけど少し距離があって、ここから毎日通うのには少し不便だ。
その為就職したのを期に、一人暮らしをすることに決めたのだった。
その一人暮らしの部屋も、一年足らずで火事の貰い火という災難に見舞われ、結果として修平さんと一緒に住むことになったのだけど。
のんびりとした下町にある我が実家は、母がまだヒロ君と再婚する前、私と二人暮らしだった頃からの住んでいる2階建ての木造家屋で、そんなに広くはないけれど小さな庭と縁側があるのが気に入ってたと、いつだか母が言っていた。
もともとは借家だったのをヒロ君との再婚を期に買い取ってから、少しずつだけど丁寧にメンテナンスをしながら住み続けている。
家を出てから小一時間後に辿り着いた実家で、門戸の前に立ってなんとなくその佇まいを見上げていると、頭の上の方からガラガラという音が聞こえた。
頭を上げると、二階の窓から母が顔を出していた。
「おかえりなさい、杏奈。そんなところに突っ立ってないで早くあがってらっしゃい。」
髪を一つ括りにした眼鏡姿の母は、私にそう声をかけるとさっさと顔を引っ込めて窓を締めてしまった。