*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
リビングに顔を出すと、テーブルの上にはお湯呑とお菓子の乗ったお皿。
荷物を部屋において手を洗い終えるまでほんの数分しかかかっていないから、私が帰宅する前から準備してくれていたのだろう。
母は態度にこそ出さないけれど、きっと私が帰ってくるのを楽しみに待っていてくれたのだと思うと、胸が温かくなる。
そんな私の感動を知ってか知らずか、母は急須を傾けながらこちらのほうを見ずに淡々と私に声を掛ける。
「ヒロのところにはもう顔を出したの?」
「ううん、まだだよ。後で顔を出そうとは思ってるの。」
「そう。ところで杏奈、今回は何か用事があって帰ってきたんでしょ?」
「えっ?」
母のセリフに思わず目を丸くする。
ちょっと時間がかかるとはいえ、日帰りできないほどは遠くない。これまでだって特に用事がなくても、前日や当日に電話で「明日(今日)帰るね。」と言って気軽に帰省したりしていた。
それなのになぜ今回、母がそんなふうに言うのか分からない。
そんな私の頭の中を読み取ったかのように、母がフフッとしたり顔で笑った。