*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
「杏奈ったら修平くんと暮らし始めてから初めてじゃない?帰ってくるの。」
「そ、それはだってっ、私も仕事で忙しかったし、」
「そう?それまでは忙しくしてても電話は割とよく掛けて来てたわよね?この前久々に掛けて来たかと思ったら、聞きたいことだけ聞いてすぐに切っちゃうし。」
母が言う『聞きたいこと』とは、つわり中の千紗子さんへの贈り物のことだ。
元来寂しがり屋な私は、自分で一人暮らしを決めたものの、何かにつけ実家に電話を入れていた。
料理のことはヒロ君に、本のことや趣味のことは母に。全然何も用がない時でも二人の声を聞きたくて家に電話を入れることもしばしば。
思わぬ指摘に口ごもってしまった私を見て、母は「しょうがないわね」というような微笑みを浮かべてから、口を開く。
「お母さんはあなたが元気でやってるならいいのよ。」
それから私の額をちょんと人差し指で突く。
「でもヒロは寂しがってるわよ。」
私は何だか申し訳なくて「うん」と素直に頷いた。