*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
「それで?今日は何か必要な荷物でもあったの?言ってくれたら送ってあげたのに。」
話が元に戻って、「そうだった」と思い出す。
「金曜日にパーティにお呼ばれしててね、それでこっちにあるドレスとか一式を持って帰ろうと思うの。」
「ああ、そういうことね。」
実は母の職業柄、出版社などのパーティに家族同伴で招待されたりすることがあり、私はパーティ用のドレスを数点持っていた。
そのうちの一着は一人暮らしのアパートにも置いていたのだけれど、火事のときに駄目になってしまったから捨ててしまった。
今回遥さんにお誘いを頂いたのを期に、修平さんと暮らす家に持って帰ろうと思ったのだ。
「パーティには修平さんと行くの?」
「え?なんで??」
「だって『TAKI建設』の御曹司なんでしょ?彼。」
「お母さん、知ってたの…?」
私は母にその話をしていなかったから、母が当たり前のように言ったことに驚いた。
「知ってたの、て……前に修平くんから名刺を頂いてたでしょ?『TAKI建設』で瀧沢さんっていったら聞かなくても分かることよ。」
「そうなんだ……」
やっぱりすぐに気づかなかったのは私くらいらしい。
改めてちょっと落ち込む。
「パーティは修平さんとじゃないの。『TAKI建設建設』関係のものではあるんだけど、誘ってくれたのは修平さんのお友達で秘書の方なんだ。招待状が余ってるから是非にって。」
「そうなの。」
「うん、修平さんはきっとお仕事で忙しいから、私一人で行ってくるんだ。」
「ふ〜ん」
そう相槌を打ったあと、母は顎に手を当てて何か考えている。
「お母さん?」
どうかしたのかと尋ねると、母はにっこりと絵に書いたような笑顔を作った。
母がその顔をするときは、何か楽しい遊びを思いついた時か、イタズラを仕掛ける時だ。
「杏奈、出掛けるわよ。」
言葉と同時に立ち上がった母は、それから忙しなく動き始めた。