*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
「じゃあまたね、杏奈。」
「杏、なにか困ったことがあったらいつでも連絡してくるんだぞ。」
『瀧沢』と立派な表札のかかった大きな門の前で車を降りた私に、両親がそれぞれに言葉を掛ける。
「ありがと、ヒロ君。お母さんも、色々とありがとう。」
「ふふっ、こちらこそ。娘がいる醍醐味を味わえて楽しかったわ。」
「送ってくれてありがとう。気をつけて帰ってね。」
そう言って私が手を振ると、ヒロ君が運転する車がゆっくりと走り出した。
実家に帰った私を連れ出した母は、近所にあるヒロ君の喫茶店へと私を連れて行くと、ヒロ君に「杏奈と出かけてくるわね」と宣言した。
するとヒロ君も「それなら」と言って店を閉めて一緒に付いて来ることになったのだ。
幸い店にいたのはご近所の常連さんで、私も子どもの頃からよく知る田中のおじちゃんと柴田のおじちゃんの二人だけだった。
二人は久しぶりにあった私を見て「杏ちゃんは相変わらず可愛らしいなぁ」とにこにこしながら言ってくれたけれど、褒められたような子どもっぽいと案に言われたような、そんな複雑な心境になりながらも笑顔でお礼を言っておく。
そんな二人のおじちゃんたちは、「せっかくの家族水入らずなのだから」と、快く臨時閉店を了承し、店から出ていった。
(いくら常連さんだからって、お客さんを追い出しちゃてだいじょうぶなのかな…)
二人を見送った後、そんなことをぼんやりと考えていると、私の考えが伝わったのか、ヒロ君が
「二人にはまたお礼のサービスしとくから心配ない」
と頭をポンポンと軽く叩きながら口にした。