*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
驚きのあまり、すぐ目の前まで来たその女性を見つめることしか出来ない。
白いブラウスの上に光沢のあるベージュのノンカラージャケットを羽織った彼女の胸元には『村上』とネームプレートが着いていた。
招待状を握ったまま固まっている私を不審に思ったのか、村上さんはまじまじと私の顔を見た。
「あ、あなた…」
私の招待に気付いた彼女は、一瞬大きく目を見開くと口元をキュッと引き結び、私を鋭く睨みつけた。
「こんなところまで瀧沢室長を追いかけて来ただなんて…厚かましいにもほどがあるわね。」
「わ、私はっ」
『修平さんを追いかけてきたわけじゃない』と言おうとした私の言葉を遮るようにそのひとは言葉を畳み掛ける。
「身の程をわきまえたらどうなの?あなたのような人が来る所じゃないの。」
抑え込まれるように吐かれた言葉に、喉の奥が詰まったみたいに声が出ない。
招待状を握る右手に、力が籠もる。
足に力を入れ、ぐっと顎を持ち上げ目の前の女性と視線を合わせ、軽く息を吸い込むと口を開いた。
「私…御社の社員の方からきちんと招待されてこちらにお伺いしたんです。ですが、私が招待状を持っていても入れないような規定に引っかかっていると言うならここで引き返します。どこがそうなのか、ご説明下さい。」
「な、なに……」
困惑げに眉を寄せるが、口を噤んだまま私を睨みつけてだまっている。
不快感を露わに睨みつけられて、怯みそうになる自分を叱咤する。震えそうになる足に力を入れ、下がりそうになる体を踏み留めた。
私の弱気が伝わったのか、そのひとは一歩私の方に足を踏み込んできた。
「屁理屈言っても、誤魔化されないわよっ!」
食って掛かってきそうな勢いに、耐えきれずに足を後ろの引こうと動かした時。
「屁理屈を捏ねているのはあなたでしょう?」
「遥香さん!」
振り向くと遥香さんがこちらへとやってくるところだった。