*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!

 「杏ちゃん、来てくれてありがとう。」

 「遥香さん…」

 「もう着く頃だとは思ってたけど、迎えに出てみて正解だったわね。」
 
 そう言ってにっこりと微笑んだ遥香さんは、その優しげな笑顔をすっと消すと、私の向かいに立つ女性をじっと見つめた。

 「村上さん、あなたここで何をしているの?」

 「葵さん…わ、私は案内係の仕事をして、」

 「受付の業務には招待客を追い返す仕事は入っていたかしら?」

 「そ、それは……」

 「彼女は私が招待したれっきとしたお客様です。万が一なにか理由があったとしても、彼女を追い返す権限はあなたにはないはずですが。」

 「っ、……」

 言葉に詰まったその村上さんは、悔しそうに私を睨んでくる。

 「あなたはあなたの仕事をきちんと遂行して下さい。このことはあなたの上司にも報告させて頂きます。」

 「そ、そんなっ!室長に言わないで下さいっ!」

 遥香さんは激しく動揺する村上さんを冷たく一瞥すると、

 「上司に報告されたくないような言動は以後謹んでください。」

 と低い声で言い、私の背中に手を添え「行きましょう、杏ちゃん」と微笑んで私をその場から連れ出した。

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