*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
このビルは地下一階から地上十二回までの十三階建て。
さっき入ってきたエントランスがある一階には、小さなフラワーショップとコーヒーショップが入っている。
地下一階にはコンビニとクリーニング店、そして調剤薬局が入ったドラッグストアがあり、二階、三階は飲食店、四階から五階はクリニック、そして六階から十階までがこのビルの施主である企業のオフィスになる。
そして十一階はスポーツジム、十二階は有名や老舗和食店やフレンチレストランなどが入っていて、最上階になる十三階は地上を一望できる展望バーになっているらしい。
「すごいですね……」
遥香さんに二階と三階を順に案内されながら、ビルの説明やそれぞれのテナントの特徴を教えてもらっただけで、その凄さに圧倒されてしまう。
感動や驚きに満ちた内心とは裏腹に、私の口からはそんなありふれた言葉しか出てこない。
「どんなテナントを入れるかは、プロジェクトチームみんなで話し合って決めたものだけど、そのチームを率いるのが修平くんってわけ。」
「す、すごい……」
「でしょ?ふふっ…」
こうして修平さんの仕事の成果を目の当たりにすると、彼が本当にすごい人だということを思い知る。
今まで何も知らなかった自分を叱咤したくなる。
(私…こんなすごい人と付き合ってるんだ……)
仕事が出来て、かっこよくて、御曹司ーーーーー
(モテないわけないじゃない……)
さっきの村上さんみたいに彼に好意を寄せる女性は、思っているよりもずっと多いのかも。
(私よりももっと修平さんに似合う、素敵な女性がいるんだろうな…)
修平さんとの喧嘩を経て薄れかえていた『不安』がまた芽を出しそうになって、思わずぶんぶんと頭を左右に勢いよく振った。
「杏ちゃん、どうかしたの?」
長いまつ毛をパチパチと瞬かせながら、遥香さんは不思議そうに私を見た。
「な、なんでもありません……」
ちょっと恥ずかしくなって、「へへへっ」と笑ってごまかしておいた。