*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!

 そんな話をしながら三階を案内してもらっていた時、遥香さんの携帯電話が鳴った。

 「ちょっとごめんね。」と断った遥香さんは、携帯を耳に当て人通りの少ない窓際に寄って話をしている。

 短い通話を終え私のところに戻ってきた遥香さんは

 「ごめんね、ちょっと急な用件が出来ちゃって…すぐに戻れると思うのだけど、杏ちゃんは先に会場に言っておいてもらえるかな?最上階がパーティ会場になってるから。」

 申し訳なさそうに、でも少し急いだ口調でそう言う。

 「私は大丈夫です。気にしないでお仕事してきて下さい。」

 「ホント、すぐに戻るからね。なにか困ったらいつでも電話してね!」
 
 そう言い残して、足早に行ってしまった。

 (遥香さん、大変なんだなぁ)

 彼女の綺麗な後ろ姿を見送りながら、しみじみと思う。

 今回のレセプションパーティは新社屋のプレオープンを兼ねたマスコミや近隣の会社や住民へのお披露目会なのだ。
 主催は施主であるこのビルにオフィスを移転する企業なのだけれど、建設を請け負った『TAKI建設』も”ゲスト”というよりは”ホスト”側の立ち位置なのだろう。
 だからあの村上さんとかいう女性も案内係を担当していたのだと思う。

 (忙しい遥香さんに案内させちゃって申し訳なかったかも……)

 そう思いながら柔らかな絨毯敷の通路を歩き、エレベーターホールを目指した。

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