*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
案内表示を見ながらエレベーターホールを探す。
私がいる場所からエレベーターホールはちょうど対角線上にあるみたいだ。
ふかふかの絨毯に細いヒールが足を取られないように用心しながら進んでいると、年配の外国人女性がジェスチャーを加えながら何かを訴えているのが目に入った。
その外国人女性に対応している女性は、しきりに英語で話しかけているが、どうも外国人の方には英語は通じないらしい。
何となく気になって耳が会話を拾ってしまう。
すると、外国人女性の話す言葉の中に、私の知っている単語がいくつか出てきた。
「Brug for hjælp noget?(なにかお困りですか?)」
気付いたときにはその女性に話しかけていた。
「Taler du dansk?(あなた、デンマーク語が話せるの?)」
「Hvis en lille(少しなら)」
私がそう返すと、その女性は私をキュッと抱きしめ「Det var godt!(良かったわ!)」と大いに喜んでくれた。
こんなに喜んでもらえるなんて、大学の時に研究の傍らデンマーク語を勉強した甲斐があるというものだ。
いったいこの外国人女性が何に困っていたのか聞いてみようと思った矢先、外国人女性の後ろから怒りを含んだ低い声が聞こえてきた。
「あ、あなた……またっ!」
外国人女性からそっと体を離して視線をそちらに向けると、そこには村上さんが立っていた。