*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
 ほとんど空になったペットボトルを握りしめたまま、無言で俯いていると

 「杏奈…怒ってる…よな?」

 修平さんの弱った声が聞こえてきたけれど、私は彼とは反対側に顔を逸らして、彼の方を見ないことにした。

 (小犬のふりをしたって騙されないんだからっ!!)

 黙ったまま心の中で彼に文句を言う。
 正直、しばらくは彼の顔を見れそうにない。

 それは、この状況に腹を立てている、というよりも、さっきまでの濃密な遣り取りが恥ずかしすぎて、単に彼の顔を見ただけで、また全身が真っ赤になってしまいそうだからだ。

 そのまま黙っていると、私の頭の上にふわりと大きな手が乗った。

 「ホント、ごめんね、杏奈……俺のこと嫌いになった?」

 最後の言葉があまりに弱々しげで、思わず首を左右に振った。

 「本当?」

 今度は一度だけ小さく縦に首を振る。

 「良かった…」

 吐息と共に吐き出されたその言葉に、彼が心底安心した、ということが伝わってくる。

 それでも私は彼の方を向くことが出来ない。
 色々な気持ちが胸の中を渦巻いて、素直に彼に向き直るのを邪魔している。

 「お腹空いてるよね。何か簡単なものを作って持ってくるから、杏奈はここで休んでて。」

 そう言って彼が部屋を出ていくと、やっと顔を上げることが出来た。
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