*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
『皆様、お食事中、ご歓談中ですが、ここで施工主でいらっしゃいますTAKI建設設計室長瀧沢様からお祝いのご挨拶を頂戴いたします。』
司会者のセリフに、体がピクリと固まる。
吸い寄せられるように視線を前に向けると、壇上の端から中央に立つマイクに向かって泰然と歩いていく彼の姿が目に入った。
「修平さん…」
小さな声は会場のどよめきに滲んで消える。
会場の中でひときわ明るい壇上は、数十メートルほど離れたこちらからでもはっきりと見ることが出来た。
体にフィットしたグレーの三揃えのスーツを着た修平さんは、いつもはナチュラルに下ろしている柔らかな髪を、整髪剤で後ろに流すようにセットしている。
いつもみたいに爽やかな笑顔はないけれど、その代わり仕事の出来る大人の男性の色気みたいなものが漂っている。
そんな彼の姿に私の視線は釘づけだった。
けれど「素敵」とか「カッコイイ」とか、時には「あとで声を掛けてみない?」と言った女性同士の内緒話までもが次々に私の耳に入ってきて、その度に、胃の奥あたりがムカムカとした不快感が広がっていく。
そんな中、彼がマイクの前に立った。
そして会場の人々を見渡した次の瞬間、彼は瞳を丸く見開いた。