*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
お皿と共に男性にぶつかった私は、床に横倒しに倒れ込んだ。
一瞬周りから音が消えたのかと思った。
ちらばった皿と料理。
床に着いた手のひらから伝わる絨毯の柔らかさ。
すぐ横に立つ男性の靴の色。
すぐ後ろで「くすっ」と笑う女の声が聞こえた気もする。
一気に流れ込んで来た情報に頭の中の情報処理が追いつかない。
ざわついた会場の音が耳に戻ってきた時、頭の上から男性の怒鳴り声が聞こえてきた。
「なんてことしてくれるんだっ!!」
反射的に見上げると、三十代半ばくらいの男性のスーツの胸元が料理のソースか何かでベッタリと汚れていた。
すぐに「すみません」と謝ろうと思って口を開くが、喉の奥が張り付いたみたいに声が出ない。
「どうしてくれるんだ!こんなに汚してくれてっ!」
大きな声に体がビクリと跳ね上がる。
(立ち上がってちゃんと謝らなきゃっ)
怒る男性に謝罪をしなければいけないと思うのに、萎縮した体が思うように動かない。
体が震えて足に力が入らず立ち上がることすら出来ない。
「おいっ、聞いてるのかっ!!」
その男性はいきなり私の手首を掴むと、自分の方に引き上げるように引っ張った。
(いやっ、怖い!!修平さんっ!!!)
両目をギュッとつぶると、瞼の裏に彼の姿が浮かんだ。