*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
騒ぎに気がついたのか私達を取り囲むようにパーティ客が集まっている。
ヒソヒソと話す声がそこかしこから聞こえてきた。
「そうですか……。名乗り遅れましたが、私はこういうものです。」
修平さんが胸元からスッと名刺を差し出すと、男性はそれに目を落としハッと息を呑んだ。
きっと彼はパーティに遅れて来たのか中座していたのだろう。
ついさっきまでの壇上の修平さんを見ていなかったのだと思う。
「た、TAKI建設の瀧沢……さん」
「はい。」
「ってことは…」
動揺する男性に修平さんは一歩近付き、男性の耳元で何かを小声で囁く。細められた瞳は、凍てつく月のように冴え冴えと光っていた。
次の瞬間、ヒッと息を飲み込んだ男性は、数歩後ずさる。その顔色はさっきまでとは逆で、青ざめていた。
「ス、スーツをちゃんとしてくれるっていうなら、もういいっ…」
「ありがとうございます。ご寛容なお心に感謝いたします、土居様。」
名前を呼ばれた途端、男性が縮み上がるのがハッキリと分かった。
「では、ーーー葵。」
修平さんが振り向くと、そこにはいつの間にか遥香さんが立っていた。