*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!

 男性のそばに来た遥香さんが、「それではお客様、こちらに」と優雅な手付きで案内を申し出る。

 男性はそのまま遥香さんに着いてこの場を立ち去ろうとした。

 (わ、私…まだきちんと謝ってないっ!!)

 意を決して大きく息を吸い込むと、去りゆく男性に向かって声を上げた。

 「すみませんでしたっ!」

 腰を折って頭を思い切り下げる。

 転んで料理をぶつけてしまったのは、紛れもなく私の落ち度だ。
 修平さんが男性の怒りをうまく収めてくれたとはいえ、自分の失敗を謝らないなんて考えられない。
 
 私は頭を下げたまま言葉を続けた。

 「大事なスーツを汚してしまって本当に申し訳ありませんでしたっ。」

 数メートル先の男性に聞こえるように大きめの声で謝る。

 すると下げた私の頭の向こうから、

 「もういい。俺もカッとなって怒鳴ってしまって悪かった。」

 という男性の声が聞こえた。

 私が顔を上げた時にはもう、その男性は背中を向けて出口に向かって歩いて行くところだった。


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