*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
一件落着、という空気が流れ、私達を取り巻いていた輪がゆっくりと崩れていく中、斜め後ろに何かを感じて何気なく振り返った。
恐ろしいほど鋭い瞳で私を睨む女性がいた。
ーーー村上さんだ。
「っっ、」
思わず息を呑んだ私に、すぐ横に立つ修平さんが気付いてそちらに顔を向ける。
村上さんの瞳がかすかに揺れる。
その瞳は今にも泣き出しそうに見えた。
「なんで、なんでその子なんですかっ…」
噛み付くような勢いでそう口にした村上さんの顔は、怒りと悲しみが入り混じった複雑な表情をしている。
「そんなどこにでもいる地味な子じゃなくて、瀧沢室長にはもっとっ、」
「もっと、何?」
地を這うような低く、それでいて体の芯から凍てつきそうなほど冷え冷えとした声が隣から聞こえた。