*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
火事に遭って行くところが無くなった私を、修平さんは自分の家に置いてくれた。階段から落ちた私を助けて足を捻挫した彼の為に、飼い犬のアンジュ(フラットコーテットレトリバー メス 三歳)のお世話と、家事の手助けをすることを大義名分に、私は彼の家に居候させてもらうことになったのだ。
その後も小さなハプニングを乗り越えて、私の両親の許可も下りた今、アパートにある必要な荷物を持ち出して、彼の家に引っ越す。
とはいえ、家電類は全滅だし、愛蔵の本達も無残に濡れてしまってダメになってしまった。
私が持ち出すことにしていたのは、クリーニングに出せば着れそうな洋服、お気に入りの食器や調理器具、想いでの品数点、ぐらいのものだった。
残ったものは、後日まとめて業者が処分してくれるように、修平さんが手配してくれた。
「こんなに少なくて大丈夫?」
案の定、荷物の少なさに修平さんが心配している。
「うん、すぐに必要なものは前に運んだし、そもそも生活するのに必要な物は、みんな修平さんの家にあるでしょ?」
彼の家は高級住宅街にある大きな一軒家で、ゲストルームも数部屋あるくらいに広いから、私の荷物を置いておく場所に困ることはないのだけれど、余分な荷物を持っていくのは私の性格上、嫌だった。
「それに、私が実家から持って来た荷物のほとんどは、『本』だったから…」
「そっか…、こんなに沢山、残念だったね…」
水浸しになった痕跡が残る本棚に二人で目を遣る。
そこには、私が昔から愛読してきた小説がシリーズでいくつも並べてある。もちろん『橘ゆかり』の本も。
「俺の部屋の本棚にも同じものもあるし、杏奈の好きに読んでいいからね。」
「ありがと、嬉しいよ。修平さんちには、書庫もあるんだよね!今度ゆっくり見てみたいな。」
「いつでもどうぞ。……っていうか、杏奈。」
太すぎず整った眉を、彼が少し上げて目を細める。
「『修平さんの家』、じゃないだろ?」
「あっ!…えっと、」
「今日からは『俺たちの家』だよ。」
そう言って、彼は私の肩を抱き寄せて、頬に「ちゅっ」とリップ音を立てた。