*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
手入れの行き届いた日本庭園をゆっくりと進む。湯上りの火照る体に夕風が心地よい。
隣を歩く人を横目でこっそり見上げると、重ね合わせた襟から覗く喉元と鎖骨にドキッと心臓が跳ねる。
(浴衣姿、色っぽい……)
初めて見る浴衣姿の修平さんは、いつもの爽やかさに得も言えぬ色気まで加わっていて、うっかりすると目が釘づけになってしまうほどの恐ろしい魅力にあふれている。
(さっきだって私があと少し遅かったら、絶対あの女の子たちに声を掛けられてたはず!)
お風呂上りの私が待ち合わせの場所に向かう途中、少し先を歩く女の子二人が修平さんを見ながらコソコソと何かを言い合っていたのを見て、慌てて彼に駆け寄ったのだ。
(私なんかよりずっと修平さんの方が、一人にしておけないんだからっ!)
一人ぷんすかしながら脳内会話を繰り広げていると、急に目の前が陰った。
自然と顔を上げるとすぐ目の前に修平さんの顔があって、次の瞬間、ちゅっと音を立てて離れた。
一瞬のことにポカンとするが、すぐにそれがキスなのだと分かる。
「な、な、なん」
「浴衣、とっても似合ってる。可愛すぎて我慢できなかった。」
『なんで』と私が全部言い切る前に、そう言って笑った彼は私の腰を片手で抱き寄せる。
広い庭園のなか、見えるところに他の人はいないのだど、ここが外だということに変わりはない。
瞬時に真っ赤になる私を見て、修平さんはフフッと怪しげに笑った。
「もう部屋に戻ろうか?湯上りの色っぽい杏奈をこれ以上誰にも見せたくない。」
燃えるように染まった私の耳の、触れるか触れないかギリギリのところで、彼は甘く囁いた。
「~~~っ!」
声にならない叫びを上げた私の手を修平さんはギュッと握ると、それまでより早足で来た道を戻り始めた。