*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!



 「んん~~っあわびっ!美味しすぎる~~っ!」
 
 「近海の海で鮑が取れるらしいよ。新鮮な物は本当に美味しいね。」

 料理に舌鼓を打ちつつ、のんびりと会話を楽しむ。
 ここしばらく忙しくて、こんなふうにゆったりと食事や会話を楽しむのは久しぶり。
 それがこんな素敵なお宿で、だなんて夢みたいだ。

 「そう言えば杏奈はデンマーク語が分かるの?」

 ふと思い出したのか、修平さんが訊いた。

 「レセプションパーティの時、ラースの奥さんを助けたんでしょ?」

 「助けたってほどじゃないよ、ちょっと声を掛けただけだから。」

 「デンマーク語はどこで覚えたの?」

 「卒論の時。日本の民話や外国の童話を研究したの、アンデルセン童話とかグリム童話とか。それでデンマーク語を勉強してみたくなったんだ。」
 
 「ああ、グリムはデンマークの人だっけ?」

 「うんそう。独学だから中学生英語みたいな簡単なデンマーク語しか話せないんだけどね。」

 舌をペロッと出しながら肩を竦ませると、

 「それでもすごいよ。言葉が分かってても自分から外国人に話しかけられる日本人は少ないからね。」

 そう言って修平さんが褒めてくれるから、自分のことが少し誇らしくなる。
 
 ちなみに英語はデンマーク語よりは少しマシ。ヒロ君が分かりやすく教えてくれたから。

 ヒロ君は若い頃に海外にアチコチ行ったらしく、ネイティブみたいな流暢な英語を話す。
 お店に外国人のお客さんが来た時にヒロ君が英語で接客をする姿を見て、私も英語に興味を持ったのだ。

 昔は自分が母みたいな才能のないことがコンプレックスだった。だから外国語を覚えることで平凡さをカバーしようと頑張ったのだ。
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