*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
高校生の時、刺繍に嵌った時期があった。
図書館で借りた本を見ながらアレコレと色々な柄を刺して、父や母や友人にプレゼントしたりしたのだ。
目の前にある白いハンカチは、覚えたての刺繍を使って練習がてら先ずは自分に、と作ったものだった。
「これ…どうして、修ちゃんが……」
「杏奈はもう忘れちゃった?」
私の呟きは彼の耳に届いたようだ。
「去年の春、あの河川敷で君は俺にこれをくれたんだ。」
「去年の春……」
記憶を手繰り寄せる。
(去年の春…図書館で働き始めたばかりだった頃……)
そこまで考えた時、私の脳裏に一つの情景が甦った。