*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!

 高校生の時、刺繍に嵌った時期があった。
 図書館で借りた本を見ながらアレコレと色々な柄を刺して、父や母や友人にプレゼントしたりしたのだ。

 目の前にある白いハンカチは、覚えたての刺繍を使って練習がてら先ずは自分に、と作ったものだった。


 「これ…どうして、修ちゃんが……」

 「杏奈はもう忘れちゃった?」

 私の呟きは彼の耳に届いたようだ。

 「去年の春、あの河川敷で君は俺にこれをくれたんだ。」

 「去年の春……」

 記憶を手繰り寄せる。
 
 (去年の春…図書館で働き始めたばかりだった頃……)

 そこまで考えた時、私の脳裏に一つの情景が甦った。

 
 
< 235 / 259 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop